今日のトイレ本

作者/岡本好古
今まで紹介した人々比べると、格段に知名度は劣るが、私の
最も好きな作家の一人。
何しろ96年のインターネット初体験時、初めて検索したのが
氏のお名前なのだから。
1988年、北京でこの本を人から借りて読んだのが最初。
帰国後再読したく古本屋を巡ること10年。
99年金沢の古書市で発見したときの、天にも昇らん気持ちは
忘れられない。
この本に再会する過程(古本屋)で、氏の著作はほぼ買い
揃えてしまったが、中国伝奇もの、太平洋戦記、現代もの、
どれもそれぞれに味わい深い。


で、この「揚州の幻伎」には、表題作と「絹本の胡姫」の
2中篇が収められている。
前者は、高楼に佇む美姫をみそめ、何とかその高みに昇らんと
縄登りの奇術を体得するため遠くインドに旅する若者の話。
後者は、偶然見た絹本(カンバス)に描かれた異国の姫に
恋し、一目まみえんと、更に遠いイラクまで旅する若者の話。

どちらも中国唐代を舞台にした秘境冒険純愛(いやどちらも
幻の美女を追うだけなので恋愛ものではないのだが)物語。


私は、ロマンチックという言葉は、この2篇の小説のために
ある、と密かに思っている。